興収動員数大失敗!「レッドタートル」に学ぶ真実の見分け方
歴代No.1大ヒット御礼!
今世紀最高のアドベンチャー!
圧巻のストーリーを見逃すな!!
よくある映画の売り文句。
どれもこれも似たような文字の羅列ばかりで、一体何が大ヒットでナンバーワンなのか全くもって分からない。
もちろん映画のポスターにデカデカとネガティブなワードを並べるわけにもいかないので、仕方ないことではあるのだが。
CMで気になっていた映画作品がいつの間にか上映終了していた!
なんてことはよくあると思うのだが、それは単なる感覚の問題だけではない。技術と文化が変貌し続けている昨今、世に送り出される映画は星の数ほどある。映画館は当然ながら動員が多く見込める作品を長く上映したいため、実績が伴わないタイトルに無慈悲な現実を告げざるを得ない。例えそれが光り輝くダイヤの原石だったとしても、だ。
無慈悲にも上映という名の糸からプツンと切られてしまった作品。そこにさらなる脅威が襲いかかる。ネットの評価である。
動員数の数値だけを見比べ、作品自体を観てもいない人間から「爆死」のレッテルを貼られ声高々に罵声を浴びせられる。罵声は罵声を呼び、それがあたかも世間の評価であるかのようにあちらこちらへ広がっていく。まさに地獄絵図である。
こんな最悪な事態を招かぬよう、あらゆる映画はジャンルという枠を超えて生き残るための戦略を張り巡らせる。
インパクトの強いCM、印象的なキャッチコピー、耳に残るテーマソング、豪華声優陣等々。
とにかく劇場に足を運ぶ人が一人でも増えるよう、あらゆる手段で興味を引こうとする。
ある一部を除いては。
その"ある一部"として今回ご紹介するのがコチラ。「レッドタートル ある島の国の物語」。
あのスタジオジブリが手がけた長編アニメーション作品でありながら、映画史上に残る記録的な大爆死を遂げたタイトルである本作。
気付かれないほどにひっそりとした広告宣伝。
日本人が見慣れた絵柄とかけ離れたキャラクター。
声優をウリにするタイトルが山ほどある中で、無声映画という挑戦的過ぎる選択。
「あ、製作陣これ売る気一切ないな」
筆者が本作を観た後、まず第一に浮かんだ感想である。
スイーツ店が立ち並ぶ繁華街。万人受けしそうな商品をこぞって作り出しては、お客のダメ出しに頭を下げるパティシエたち。
そんな中頑なに和菓子を作り続け、こんなの流行るわけない!とバカにするお客に対し「うるさい!これが俺の信じる道なんじゃ!気に食わないのなら出て行け!!」と一蹴する頑固な和菓子職人がひとり。
「レッドタートル」を表すなら、こんな感じだ。
腕は間違いなく一流。
世間の流れに乗りさえすれば、確実に売れるものを作れる技術を持っている。
でも、自分がやりたいのは"売れる"商品を作ることではない。それでは他人の模倣も同然、自分の商品であってないようなものである。例え他人に何と言われようとも、"作りたい"ものに魂を込めなければ意味がない。これこそが、自分の信ずる道なのだ。
...というのは筆者の妄想だが、本作はとにかく「作りたいものを作った」この一言に尽きる。は?売らなければ意味ねーだろ!と思う人もいるだろうが、いつの時代でも職人とはこういう存在である。
「売れる作品=面白い作品じゃないんだよねぇ」
筆者がよく姉とする会話である。
確かにレッドタートルは万人ウケする作品ではない。興行的には大失敗だった。
しかし、これらの事実だけで「面白くない」と本当に言い切れるのだろうか。
実際に観て頂きたいためここではあえてストーリーに触れることはしないが、劇場に足を運ばれた方にはよくお分かり頂けると思う。
まぁ少なくとも、たまたま目に入ってきた観客動員数のランキングを見て「やっぱりこれつまんねぇんだわ!はい爆死!!」と笑って見過ごす。
こういうことを日常的にやっている人の心に響かない作品であることは、100%事実なのだが。
作品を観てもいないのに、バカにして笑う。
自分がその作品のファンであった時、そういう人を見て頭にきたことはないだろうか。
そこでイライラするのはもったいない。自分にとってマイナスになるからだ。
「この人は自分が日常的にネット情報を鵜呑みにして生活してますよ!って大声で宣言しているのか。なかなかユニークな自己紹介だなぁ」
この程度に思っておけばよい。
筆者にも、このユニークな自己紹介をしまくっていた時代があった。
自分が好きな作品が同じようにバカにされていた時、その愚かさを身を以て痛感した。
批判がカッコイイと思い込む風潮はどこにでもある。だがそれは、批判とバカにすることの区別が付いてない人のすることである。
「世間がそう言ってたから」
世間=自分なのか?そんなことはない。
何事も、実際に見てみなければ分からないのだ。